先日 ALTECのA7を聴きたいというお客様が来店されましたので
サウンドピットの倉庫へお連れしました。
■非常に良いコンディションが保たれているALTECのA7です。
お客様の要望で簡単な装置で音出ししてみましたがとても魅力的な音で鳴ってくれました。
性能がどうのこうのという事ではない、やはりこのスピーカーでなくては出せない音の世界があります。
ヴィンテージなんて過去の遺物じゃないの、という方もいらっしゃいますが失礼ながら良い状態の製品である事はもちろん、時代考証を考えた組み合わせの音に出会っておられないのではないか?とさえ感じます。
例えば、ALTECのA7で2015年録音のCDを聴いてもあまり良い音とは感じないかもしれません。
またその逆も有りで、最新のシステムでブルーノートのレコードやベニー・グッドマンやアーティ・ショウのオリジナル盤などを聴いても心にグッとくるものを感じられないかもしれません。
それこそが僕がいつも思っている事 『 時代の音楽は時代の装置で蘇る 』 なのです。
1970年代、1960年代、1950年代、の音楽を聴くとき、時代考証は大事なカギになると僕は思っています。
■サウンドピットの店主である僕も、もういい歳になっております。僕が学生の頃はビートルズ後半の時代です。ホワイトアルバムが出た頃、僕は高校生でした(笑)。
ビートルズが日本にやってきた時、僕はまだ中学生で、ビートルズ全盛のころというのは僕の兄の世代になります。
そんなころ、どんなオーディオ製品が有ったでしょう。
JBLならパラゴンとかオリンパスとかでしょうか、まだ4333や4343などが出る前だったですね。
TANNOYならレクタンギュラーヨークなどでしょうか。GOODMANならAXIOM301が有った頃でしょうか。
今思えば名機と言われる製品が目白押しだった時代です。
もちろんその頃の私は学生なので、とてもそんなものは買えません。
せいぜい20cmのフルレンジユニットで聴いていたのが精一杯です。
もともと僕が生まれた家がラジオ屋(今で言う電器屋)だったのでパイオニアのPE-20とかダイヤトーンのP-610等を適当な箱(オカダとかシグマのスピーカーボックス)に入れて自分の部屋に持ち込んで聴いていました。
アンプはというと、トリオ(現JVCケンウッド)の真空管式レシーバー、アナログプレイヤーはというとKS(鈴木電気)のプレイヤーを使っていました。カートリッジはというと、当時はクリスタルカートリッジなどを使っていましたね。
いや~、古い話ですねえ(笑)。
そんなシステムでビートルズを兄と一緒に聴いていたものです。
その頃はGOODMAN AXIOM301シャーウッド型で聴いているというだけでお金持ちだなあと思った時代ですね(笑)。
■その時代の音楽ファンは殆どの人がフルレンジユニットで聴いていたのではないだろうか。
レコードを制作する側も家庭で聴くスピーカーはこれくらいのものだろうという想定でレコードの音決めをしていた事でしょう。
ビートルズなどの音源はまさしくその時代のものなんですね。
その時代の音楽を最新の製品で再生すると音が奇麗になり過ぎてしまって、なにか昔聴いた音と違うのです。
それが不思議なことに、例えばGOODMAN301を昔のアンプ(QUADとかLEAKなど)で鳴らすと、ああ、この音だ! と感じるのです。
何故なんでしょう・・・、これは何も不思議な事では無く、当時の音楽を当時の装置で聴くからその時代の音が再生されている訳です。或る意味、整合性の取れた音なんですね。だから素直に人間の心の中に取り入れられるのだと思うのです。
何でもかんでも新しいものが良いわけではないのですね。音楽ってそういうものなのではないかなあ、
僕は素直にそう感じています。
■思うこと。
当店の従業員はまだ20代なのですが、ALTECのA7等を聴いて、良い音しているなあ、と言います。
なぜ今の若い人がそう感じるのでしょう。何かわからないけれど、過去に聴いた事のある『音楽』を感じるのでしょうか。もしかしたら親の体験が何かの形で受け継がれているのかもしれません。人間の感性なんて科学的に解明されている部分など殆ど無いのかもしれない。
今風の表現をするとしたらなにかDNAみたいなもので受け継がれているのかもしれません。